講演記録  その1 岩崎裕保さん
講演記録  その2 榎井縁さん
              (榎井さんの講演資料)
質問に答えて



(榎井さんの講演資料)

資料1『ようこそ日本の学校へ』

日本語指導が必要な外国人児童生徒の指導資料

平成7年文部省

〈外国人児童の作文から〉

「日 本 の 学 校」

わたしは、日本の学校に入って、子どもがとてもおおぜいいたのでびっくりしました。そして、日本の生活が始まりました。わたしは、日本語がわからなくて、おはしもつかえませんでした。きゅうしょくのとき、困りました。はしのつかいかたはわかっていたけどなかなかできませんでした。

クラスの人たちが、いろいろ話しかけてきましたが、ぜんぜんわかりません。困ってしまって「うん、うん。」とうなずいていました。ドッジボールにさそわれたけど、やったことがなかったので、とてもこわかったです。でも、「やりたくない。」と言えません。日本語がわからないと、とても困ります。わたしは、はやくおぼえたいと思いました。

そして、一年ぐらいで、わたしは、日本語を、もうかんぜんにおぼえました。けど、もし、言葉がちがっていたらたいへんだからしゃべるのはよしました。みんなは、わたしがしゃべれないと思って、いろんなことをわたしの前で話していました。わかっていたけどおこりたくなかったから、わからないふりをしていました。でも、まわりのことぜんぶ、何を言っているのかわかるようになってきて、とてもうれしかったです。

やさしい友だちもいました。あき子ちゃんとは、いつもいっしょにかえりました。さとみちゃんは、ふでばこをプレゼントしてくれました。プラジルでは、ふでばこをかうのにすごくくろうするから、もらっちゃっていいのかなあと思いました。

そして、いまでは、話ができて、何かきかれると答えられるし、もう何も困りません。わたしは、この学校にふれあいきょうしつがあってよかったなあと思います。

ここはにぎやかで、何でも話せるし、まちがってしゃべっても平気だし、困ったときがあったらたすけてくれます。わたしは、ふれあいきょうしつがとてもすきです。



〈はじめに〉

 

1.日本語指導が必要な外国人児童生徒の増加

 

近年、日本で働く家族同伴の外国人の来日が増え、これに伴って、日本の公立の小・中学校で学ぶ外国人児童生徒が増加している。平成5(1993)9月に文部省が実施した調査によると、日本語指導が必要な外国人児童生徒の数は、小学校2,611校、7,569人、中学校1,094校、2,881人で小中合計10,450人である。平成3(1991)9月に実施した同調査(小学校1,437校、3,978人、中学校536校、1,485人、小中合計5,463)に比べて、2年間で倍増に近い増加を示している。

これらの外国人児童生徒の言語的背景は多様で、ポルトガル語(4056:38.8%)、中国語(3,171:30.3%)、スペイン語(1,347:12.9%)3言語を筆頭に、48言語に及んでいる(平成3年度調査では43言語)。特に、ポルトガル語やスペイン語を母語とする児童生徒の増加が目立つが、これには、平成26月に行われた「出入国管理及び難民認定法」の一部改正が関係している。この改正によって、プラジルなど南米に在住する日系人が、「定住者」「配偶者等」の在留資格を得て日本に定住し就労することが可能となり、来日する日系人が増え、公立の小・中学校で学ぶ児童生徒も増加したと考えられる。

地方自治体レベルでみれば、平成5年度調査では、日本語指導が必要な外国人児童生徒が居住する市町村は828にのぼっており、これは全国の市町村数の26%に当たる。

また、外国人児童生徒が在籍する学校は、小・中学校あわせて3,705校になるが、外国人児童生徒が1名もしくは2名の学校が2,530(全体の68.3%)という状況である。

これらの外国人児童生徒のほとんどは来日前に日本語の指導も受けないまま、言語も生活習慣も異なる環境のなかに入ってくることから、特に入学当初の段階では、言葉と学校生活への適応に苦労することになる。一方、受け入れる側の学校や個々の教師も、そのような児童生徒を受け入れた経験に乏しいため、彼らに対してどのように対応してよいかわからず当惑することが多い。この戸惑いは教師ばかりでなく、日本人児童生徒にとっても同様である。

わが国の国際化が多局面において進展している今日、学校は外国人児童生徒の受入れとそれに伴って生じる様々な課題に対して、適切に対処することが求められる。外国人児童生徒の教育には従来では考えられなかった様々な課題があるが、一方で外国人児童生徒を受け入れることは、教育上、積極的な意義があるということも認識する必要がある。

 

2.外国人児童生徒の教育の意義

 

それでは、外国人児童生徒の受入れはどのような意義をもっているのであろうか。この点については、外国人児童生徒と日本人児童生徒それぞれの立場から別々に考えることも可能だが、ここではそれらを統一的にとらえるための基本的視点として、次の二点を挙げておきたい。

(1)一人ひとりを大切にした教育

近年、一人ひとりを大切にする教育の重要性が強調されており、現行の学習指導要領においても、「国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し、個性を生かす教育を充実する」ことが基本方針の一つとなっている。この教育理念は、外国人児童生徒の教育にとっても重要である。すなわち、外国人児童生徒といっても個々の子どもによってその言語的、文化的、教育的背景や日本語理解のレベルには大きな差異があり、同様に扱うことはできない。言語も文化的背景一人ひとり違う外国人児童生徒の教育は個人差を考慮して指導の手だてを工夫することが不可欠である。一人ひとりの個性に配慮した指導が、外国人児童生徒に対する教育の効果を高めるための基礎的条件となる。子どもたち一人ひとりを個性ある一人の人間として理解しようと努めることは教育の基本であるが、外国人児童生徒の教育は、そのことの重要性を改めて考えさせてくれるのである。外国入児童生徒の受入れとその教育は、日頃の実践の成果を生かし、また教育の基本に立ち返って実践を見直すための絶好の機会と受けとめることができる。

 

(2)教育の国際化への対応

国際化とは端的に言えば、ヒト、モノ、情報等が国境を越えて移動し、国家間で相互交流が盛んになり、相互依存・相互協力の関係が深まる現象である。

国際化時代に必要な人間の資質・能力とは何であろうか。国際化の展開過程では、経済、文化、宗教など、様々な面で摩擦や緊張も生まれやすい。そうした摩擦や緊張をときほぐし、各国が互いに助けあいながら共に発展していくためには、諸国の歴史や文化生活習慣、価値観等を学びあい互いの立場を理解しあう不断の努力が欠かせない。

これからの時代には、言葉や生活習慣やものの見方・考え方の異なる人々と、互いの相違を認識し尊重しあい、しかもそうした差異を超えて、パートナーとして協力しあいながら共に生きるという心とコミュニケーション能力が基礎的資質として要求されるようになる。異文化をもつ人々と意思を伝えあう、いわゆる異文化間コミュニケーションの能力とは、単なる外国語能力ではない。それは、ものの見方・考え方・価値観が異なる人々や、利害関係の異なる人々との間で、異質な行動や考え方を奇異なものと受けとめたりするのではなく、相手の意見をよく聞いて、正しく理解し、可能な限りそれを尊重する立場に立ちながら、他方では自分の考えを説得力のある方法ではっきり表明し、相手に理解してもらうように働きかけることによって、立場や意見の違う人々が協力できる方法を探り出すことのできる能力である。国際化の進展した社会において「信頼される人間」であるためには、このような意味の資質・能力が大切である。

こうした資質・能力を培うことは、日本に限らず国際化が進む今日の世界各国の共通の課題となってきている。特に日本人児童生徒の場合について、そのような意味の国際的な資質・能力を培う教育の課題を考えるとき、外国人児童生徒の受入れとその教育は重要な意義をもっているということができる。なぜならば、多くの日本人児童生徒たちにとって外国人児童生徒との出会いは、異文化理解・異文化間コミュニケーションを直接体験するよい機会を提供してくれるからである。もっとも、そうした機会が与えられれば自動的に国際的な資質・能力が養われるわけではない。教育の国際化の視点に立つ学校づくり、学級づくりを基礎にした教師の適切な指導が必要である。

 

以上述べたように、外国人児童生徒の教育は、今後ますます進展する国際化に対応した望ましい資質・能力を養う貴重な場を提供してくれるばかりでなく、一人ひとりを大切にするという教育の基本に立ち返って学校教育の在り方を見直す機会を提供してくれる。外国人児童生徒の受入れが、ともすれば閉鎖的・画一的になりがちだといわれる日本の学校教育の改善に役立ち、世界に開かれた学校として発展する契機となるように、その意義を積極的に受けとめ、生かす努力が大切である。




資料2. 年次別外国籍在学者数


資料3. 都道府県別外国人児童・生徒数1992年(単位:人)
都道府県 小学校 中学校 小 計 都道府県 小学校 中学校 小 計
北海道 223 63 286 滋賀県 521 278 799
青森県 95 20 115 京都府 3,499 1,877 5,376
岩手県 32 12 44 大阪府 14,396 9,006 23,402
宮城県 242 83 325 兵庫県 5,212 2,913 8,125
秋田県 32 12 44 奈良県 437 281 718
山形県 56 30 86 和歌山県 305 180 485
福島県 195 82 277 鳥取県 139 77 216
茨城県 334 135 469 島根県 103 32 135
栃木県 131 66 197 岡山県 612 317 929
群馬県 161 93 254 広島県 1,016 693 1,709
埼玉県 808 313 1,121 山口県 819 399 1,218
千葉県 778 327 1,105 徳島県 29 5 34
東京都 4,455 2,291 6,746 香川県 112 69 181
神奈川県 2,383 908 3,291 愛媛県 161 71 232
新潟県 152 63 215 高知県 65 22 87
富山県 85 29 114 福岡県 1,681 845 2,526
石川県 132 57 189 佐賀県 85 39 124
福井県 343 195 538 長崎県 134 43 177
山梨県 115 67 182 熊本県 97 41 138
長野県 323 158 481 大分県 72 25 97
岐阜県 464 340 804 宮崎県 42 7 49
静岡県 636 277 913 鹿児島県 51 23 74
愛知県 3,410 1,845 5,255 沖縄県 192 75 267
三重県 364 201 565 合計 45,729 24,985 70,714
(注)文部省の資料による。
(総務庁行政監察局編『外国人をめぐる行政の現状と課題』)


資料4. 大阪における公立小・中学校における
外国籍児童・生徒の在籍状況


阪府 1993.9
韓国・朝鮮 18,000
中 国 1,004
ベトナム 70
ブラジル 90
フィリピン 44
その他 100
19,308

大阪市 1993.9
 
韓国・朝鮮 6,666 3,236 9,902
中 国 199 73 272
ブラジル 22 5 27
フィリピン 19 10 29
ベトナム 5 7 12
ペルー 10 1 11
イラン 2 2 4
アフガニスタン 4 0 4
タ イ 5 2 7
インド 2 0 2
ニュージーランド 1 1 2
アメリカ 3 0 3
その他 5 2 7
6,943 3,339 10,282


資料5.都道府県別 日本語教育が必要な外国人児童・生徒数
(平成5年9月1日)
学校種別→ 小学校 中学校
都道府県↓ 学校数
(校)
児童数
(人)
学校数
(校)
生徒数
(人)
学校数
(校)
児童・生徒数
(人)
H3 H3
北海道 29 46 5 6 34 10 52 24
青森県 6 13 4 7 10 0 20 0
岩手県 8 15 4 10 12 1 25 1
宮城県 17 44 6 9 23 10 53 16
秋田県 3 8 1 1 4 7 9 13
山形県 19 32 6 8 25 5 40 8
福島県 14 37 12 22 26 5 59 13
茨城県 72 243 34 63 106 574 306 235
栃木県 65 244 40 103 105 26 347 107
群馬県 68 321 53 170 121 89 491 292
埼玉県 152 424 47 111 199 46 535 144
千葉県 143 317 60 113 203 70 430 184
東京都 346 841 126 296 472 350 1,137 859
神奈川県 205 672 98 314 303 261 986 735
新潟県 11 26 8 8 19 3 34 11
富山県 15 29 9 11 24 9 40 12
石川県 19 35 8 9 27 7 44 9
福井県 22 43 5 5 27 9 48 15
山梨県 43 89 11 18 54 21 107 39
長野県 77 219 36 84 113 60 303 137
岐阜県 65 191 20 33 85 52 224 98
静岡県 225 816 104 262 329 158 1,078 484
愛知県 251 954 99 272 350 271 1,226 617
三重県 50 207 25 61 75 33 268 116
滋賀県 59 156 24 37 83 20 193 59
京都府 51 133 14 40 65 15 173 47
大阪府 177 412 90 471 267 134 883 505
兵庫県 69 159 22 43 91 45 202 211
奈良県 30 48 12 70 42 19 118 35
和歌山県 5 10 2 2 7 2 12 3
鳥取県 1 1 0 0 1 0 1 0
島根県 4 9 1 1 5 1 10 1
岡山県 31 95 7 15 38 14 110 27
広島県 78 249 29 80 107 54 329 187
山口県 16 40 2 2 18 3 42 5
徳島県 6 12 1 5 7 2 17 2
香川県 16 43 9 21 25 8 64 17
愛媛県 5 10 4 5 9 1 15 3
高知県 10 23 6 9 16 13 32 22
福岡県 43 116 19 23 62 16 139 35
佐賀県 5 7 4 6 9 0 13 0
長崎県 11 20 6 8 17 6 28 10
熊本県 16 31 4 4 20 9 35 21
大分県 7 14 0 0 7 1 14 1
宮崎県 5 9 1 1 6 4 10 7
鹿児島県 7 12 4 8 11 4 20 6
沖縄県 34 94 12 34 46 25 128 90
2,611 7,569 1,094 2,881 3,705 1,973 10,450 5,463


資料6.母語別 日本語教育が必要な外国人児童・生徒数
(各年9月1日現在)

学校種別→ 小学校 中学校
母語↓ 人 数
(人)
構成比
(%)
人 数
(人)
構成比
(%)
人 数
(人)
構成比
(%)
ポルトガル語 平成3年 1,665 41.9 267 18.0 1,932 35.4
平成5年 3,053 40.3 1,003 34.8 4,056 38.8
中国語 平成3年 999 25.1 625 42.1 1,624 29.7
平成5年 2,105 27.8 1,066 37.0 3,171 30.3
スペイン語 平成3年 451 11.3 145 9.8 596 10.9
平成5年 984 13.0 363 12.6 1,347 12.9
英 語 平成3年 118 3.0 37 2.5 155 2.8
平成5年 361 4.8 68 2.4 429 4.1
ベトナム語 平成3年 170 4.3 93 6.3 263 4.8
平成5年 233 3.1 113 3.9 346 3.3
韓国語・朝鮮語 平成3年 139 3.5 187 12.6 326 6.0
平成5年 229 3.0 99 3.4 328 3.1
フィリピン語 平成3年 94 2.4 27 1.8 121 2.2
平成5年 203 2.7 81 2.8 284 2.7
その他 36言語 平成3年 342 8.6 104 7.0 446 8.2
41言語 平成5年 401 5.3 88 3.1 489 4.7
43言語 平成3年 3,978 100.0 1,485 100.0 5,463 100.0
48言語 平成5年 7,569 100.0 2,881 100.0 10,450 100.0


資料7. 大阪における日本語指導を必要とする児童・生徒数

<大阪府> 1993.9

母国語 児童 生徒
中 国 347 144 491
ポルトガル 68 17 85
スペイン 15 0 15
タガログ 16 5 21
韓国・朝鮮 6 6 12
ペルシャ 7 2 9
ベトナム 0 6 6
その他 17 4 21
476 184 660

<大阪市> 1993.9
母国語 小学校 中学校
中 国 83 34 137
ポルトガル 14 5 19
スペイン 10 2 12
韓国・朝鮮 7 2 9
タガログ 6 4 10
ペルシャ 5 2 7
タ イ 3 1 4
ベトナム 0 5 5
英 語 1 0 1
129 55 184


料8. 在籍人数別学校数  ( )内は構成比(%) (各年9月1日現在)
在籍者数
学校種別 小学校 中学校
平成3年 平成5年 平成3年 平成5年 平成3年 平成5年
1 人 572
(39.8)
1,086
(41.6)
308
(57.5)
596
(54.5)
880
(44.6)
1,682
(45.4)
2 人 376
(26.2)
623
(23.9)
112
(20.9)
225
(20.6)
488
(224.7)
848
(22.9)
3 人 179
(12.5)
300
(11.5)
42
(7.8)
106
(9.7)
221
(11.2)
406
(11.0)
4 人 110
(7.7)
156
(6.0)
25
(4.7)
47
(4.3)
135
(6.8)
203
(5.5)
5 人 62
(4.3)
136
(5.2)
15
(2.8)
31
(2.8)
77
(3.9)
167
(4.5)
6〜10人 97
(6.8)
227
(8.7)
16
(3.0)
54
(4.9)
113
(5.7)
281
(7.6)
11〜15人 26
(1.8)
57
(2.2)
5
(0.9)
15
(1.4)
31
(1.6)
72
(1.9)
16〜20人 10
(0.7)
9
(0.3)
5
(0.9)
9
(0.8)
15
(0.8)
18
(0.5)
21〜30人 4
(0.3)
14
(0.5)
3
(0.6)
5
(0.5)
7
(0.4)
19
(0.5)
31人以上 1
(0.1)
3
(0.1)
5
(0.9)
6
(0.5)
6
(0.3)
9
(0.2)
1,437
(100)
2,611
(100)
536
(100)
1,094
(100)
1,973
(100)
3,705
(100)

在籍人数別市町村数     (平成5年9月1日現在)
区  分 1人以上
5人未満
5人以上
10人未満
10人以上
15人未満
15人以上
20人未満
20人以上
25人未満
25人以上
30人未満
30人以上
市町村数 443 147 66 39 24 17 92   828
    

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